築地の頃のアーカイブ

トイレの神様

2014年10月14日 | 相方の修行日記

「あの、一言いいですか?」
「…トイレが、トイレがとても素敵ですね!」

ある男性のお客さまからそう声をかけられ、何だろう?とドキドキしていたので、力が抜けると同時にうれしさがじわじわとこみ上げてきました。女性のお客さまからは概ね好評いただいていましたが、男性の方に言われたのは初めてです。

トイレは、友人知人といらしたお客さまがテーブルを離れ、一人きりに戻る空間です。そんなときに、どんなことを思い何を見るのか?あるいは見ないのか?最低限必要なものは何か?いろいろ想像しながら毎日掃除をしています。飲食店で一番きれいな場所は、厨房とトイレでなくてはならない!というのが持論です。

なぜにそこまでこだわるのか?といわれれば思い当たることはひとつ。私が小さい頃家のなかで一番好きな場所が、トイレだった、というのがあります。
狭い家では姉妹共同の子供部屋が当然。とにかく一人きりになれる空間というものがトイレしかなかったのです。
ガチャガチャした喧騒を逃れようよう一人になれた私は、そこで思いきり想像の翼を広げ、ドラマの主人公になったつもりで一人芝居の練習を嬉々としていました。
「バシッ」
「いたいっ」
「あたし負けないからっ!」
そんなセリフがトイレから聞こえてくるのですから、親はさぞ不気味だったに違いありません(どんなドラマだ…)。

話がそれましたが、とにかく、トイレをきれいに保つことは私の使命!とさえ思っています。
あまり長居をされても、ましてや一人芝居をされても困ってしまいますが(笑)、お客さまがホッと一息つける空間を、これからも作っていけたらなぁ。
改めて思う、秋の日でした。

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